吉池 遥南 (社会福祉法人 恩賜財団 静岡県済生会 静岡済生会総合病院)
吉池 遥南
社会福祉法人 恩賜財団 静岡県済生会 静岡済生会総合病院
平成30年9月10日~平成30年10月5日
(医療法人医理会 柿添病院)

 柿添病院での研修では、これまでの総合病院での研修とも学生の頃に大学病院で経験した実習とも違う医療を目の当たりにしました。
 先生方は専門科に関わらず救急対応から手術、麻酔までされており、またどの先生も自分の担当以外の患者さんの病状・家族に関することなど把握されていることに驚きました。これまで大学病院・総合病院の医療に触れてきて、各科の専門医がそれぞれに特化した働きをすることでこそ安定した医療を提供できると考えていましたが、それだけが最善の形ではないということを知りました。
 救急対応は日々やっていましたが、定期受診の外来診療は初めての経験でした。週に何日か来る患者さんと顔を合わせて体調に変わりはないか聞き、何かあれば相談に乗る・処方をするという業務でした。この経験を通して、頻繁に患者さんと関わることの大切さ、それによって得られる信頼というものがあるということを学びました。今までの研修では病気を見つけること、それを迅速に治療することだけを考えて診療していたのだということを実感させられました。患者さんの近況や身の上話にも耳を傾けることで、患者さんも話しやすくなり、いざという時にコミュニケーションがスムーズになって緊急時の迅速な対応につながるのだと痛感しました。
 中野診療所では、デイケアや訪問診療に参加させて頂き、診療所の先生のお話を伺ったり実際に患者さんの体操に混ぜていただいたりして、退院後にどのようなフォローがされているか、患者さんがどんな形で長期的にリハビリテーションを続けていくのかを体感しました。入院中に行われるADL練習や廃用予防のリハビリテーションは目にしたことがありましたが、ある程度自立度を獲得した患者さんが病院の外でどのように過ごしているのかは恥ずかしながら知りませんでした。多くの方はリハビリテーションに通う日を楽しみにされていて、リハビリテーションの内容そのものはもちろん、そこに通って活動をするということも患者さんの病状の改善に深く関与するのだと感じました。
 度島の訪問リハビリテーションでは、柿添病院の理学療法士さんに同行させていただき、患者さんのお宅にお邪魔しました。度島にはスーパーマーケットなど日用品・食品をたくさん売っている店がなく、島民の方々は平戸まで船で買い物に行くということを知り、ある程度自立された方のリハビリテーションを想像していました。しかし実際には屋内で自立されている方から離れのような場所に一日中いる方まで様々で、それぞれに合わせて一人当たり1時間ほどかけてリハビリテーションを行いました。退院後とはいえリハビリテーションに通うのは難しい状況の患者さんを、入院時の情報をよく知っている理学療法士さんが担当し、リハビリテーション後の情報を病院に持って帰るというのは、患者さんやその家族にとっても安心感のあるものであり、地域医療ならではだと思います。「お墓参りに自分で歩いていけるようになりたい」という目標を理学療法士さんに伝えていた患者さんが印象的でした。
 柿添病院と関連施設での研修を通して、もっと患者さんとの距離を近くしたいと感じました。目の前にいる患者さんがどのような暮らしをしているのか、どんな希望があるのか、家族がどんな人で仲は良いのか。考えてみると非常に基本的なことですが、今まで患者さんに接する中であまり重要視していなかったことに気づきました。患者さんの生活の中で病院にいる時間はほんの一部です。だからこそ限られた時間の中で想像力を働かせ、患者さんと真摯に向き合うことが大切だと気づけたことはとても貴重な経験になりました。
 1ヶ月という短い期間ではありましたが、非常に多くのことを学ばせていただきました。ありがとうございました。
吉池遥南